2019年5月17日に、渋谷区猿楽町に美容室『alloy』をオープンした代表の平松 ヨシヒロ(ヒラマツ ヨシヒロ)さんにお話しを伺いました。
▼はじめに平松さんが美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
高校生の頃に友達同士で、運動場で裸になって切り合いっこをしていました。
▼運動場で裸で(笑)?
高校3年間、何人かで切り合いっこしようぜというノリで遊びから始まって、技術も何も知らない素人がスキばさみ1本で(笑)。今思うとすごいですよね。あの時だからできたと思いますけど(笑)。
高校を卒業するにあたって進路は大学へスポーツ推薦で行くことが決まっていました。でも、その時ソフトテニスをやっていたんですけど、大学に4年間行って、プロがない競技なのでその後どうなるんだと考えたら先が見えなかったんです。それで推薦を辞退して、就職しようとなって、仕事何しようかなと。
今のようにインターネットもなかったので、仕事の選択肢も探す手段も自分にはわかりませんでした。その中で、髪を切り合っていた楽しさから、美容師の仕事って面白いかもと思いました。ちょうどカリスマ美容師ブームが来る前でしたね。それで美容室に入ったら、ブームが来て。
▼では高校卒業後に美容学校に行かれたんですよね?
いや、僕は行ってないんですよ。18歳で美容室に就職しました。寮に入って朝から晩までずっと働きながら、3年間の通信課程で美容師免許を取得しました。
▼実際に美容室で働いて理想と現実にギャップはありませんでしたか?
確かにしんどい時期もありましたけど、それしかないと思ってやっているので、信じてやるしかなかったですよね。辞めようとはこれまでで一度も思ったことはないし、選択肢にはないですね。僕はシャンプーも下手だったので、テストが全然受からなくて、とにかくやるしかなかったんです(笑)。
▼独立を意識されたのはいつ頃でしょうか?
就職したのは関西だったんですが、20代後半になった時に自分のお店を持ちたいと思いました。それで近くにお店を出すことも考えましたが、19歳の時に感じていた『東京に行きたい、東京で美容師をしたい』という夢があったことを思い出しました。
19歳当時、そのことを先輩に相談したら、「お前なんか東京へ行っても埋もれる。今やれることをやれ」と。ずっとそれを何年もやってきて、もしこの辺にお店を出したとしても、「俺、東京にずっと行きたかったんだよ」と死ぬまで言うのも嫌だなと思って、29歳の時に東京の美容室に転職しました。
▼東京へ来て何か変わりましたか?
全部新鮮に見えました。メディアであったり、新しいものや情報など環境的にはいいなと思う反面、美容師をする上で大変だなと思いました。
▼大変というと?
関西ではお客様がいましたが、東京ではお客様を一から作らなくてはなりませんでしたから。でも色々なことを学びました。技術だったり美容師としての誇りだったり。独立したい思いはずっとありましたよ。関西にいた頃から持っていましたからね。でも東京に行きたいということをまず叶えて、それでずっと早く早くと気は焦っていました。
▼なかなか独立に踏み切れなかった理由はありますか?
お客さんが少ないとか売り上げが少ないとか(笑)。
▼きっかけは何だったのですか?
2年くらい前からですかね。誰に対しても『独立するのはあと2年後』と言ってたんですよ。1年経ってもあと2年と言っていた(笑)。
あるとき、「平松君、去年も2年って言ってたよね?」と言われてハッとしました。2年以内になんとかしてやろうと思っていたんですけど、僕はまだ足りないまだ足りないと思ってたんです。
転機は、知り合いが代官山のお店を「居抜きで入る?」と言ってくれた時ですね。でも結局話の折り合いがつかなくてこぼしてしまったんです。その後、あれはチャンスだったんだなと後悔したんです。その時に考え方がグッと変わりました。
お店を持つのはお金がどのくらい必要で、どういう風に動けばいいんだというところを初めて真剣に考えられたのですが、代官山の件で後悔したので次は本気で探そうと思いました。それで同じ美容師である長南さん(atelier-ittowa代表)にクボタさん(ウルクル営業)を紹介していただきました。
▼物件を探した期間はどのくらいですか?
去年の秋くらいから探し始めましたから半年くらいですね。お店の売り上げ予想を立てながら条件を絞り込んでいき、開業後に運営がうまくいくように色々考えましたし、ちょうど一緒にやろうと声をかけていた仲間が集まったのもそのタイミングでした。
▼色々な美容室のオープンの話を聞くと、どこも人を集めるのに苦労されてます。
それは本当に恵まれましたよね。人あってのことなので、僕一人では何もできないですから。今もオープニングメンバーには本当に感謝しています。
▼物件探しで何か大変だったことはありますか?
物件が出てこないということですね(笑)。というか、物件自体は世間にあると思うんですが、自分の出せる金額や条件との折り合いがつく物件がなかなかなかったですね。
▼自分に合った物件がなかなかなかったということですね。このお店は以前のお店からも近いのでしょうか?
いや、以前は南青山でした。
▼まぁまぁ距離ありますね。その時のお客様もこちらに来ていただいているのですか?
そうですね、フォローしきれていない方もいるとは思うんですけど来てくださるお客様には本当に感謝です。
▼この物件に決めるポイントは何だったのでしょうか?
美容室の居抜き物件だったので、スケルトンから作るよりも使えるものは使って、初期費用を抑えられるというのは大きかったですね。
▼他の不動産屋には行かれたのですか?
行きました。でもクボタさんと話していたほうが早いので、出会ってからは行きませんでした。
▼クボタの仕事ぶりはいかがでしたか?
もうすごいと思います(笑)。先陣切って行ってくれるので(笑)。僕は初めてのことだから、お店を作るのも何やったらいいかもわからないし、内見に行った時も、セット面何個取れますねとか、これだったらここに置いたほうがいいんじゃないですかとか教えてくださって。自分の働いていた美容室の間取りはわかりますけど、ボイラーが何なのかもわからない状態でしたから(笑)。
クボタさんはベテランの美容室のオーナーなんじゃないかというくらい詳しかったですね(笑)。だからパートナーみたいな感じで、窪田さんに「どう思います?」とか聞いてました。安心してというか、むしろ任せますよみたいな感じで(笑)。この物件もまだ世の中に出ていない段階で管理会社さんと交渉してくれましたしね。
▼それはクボタの得意分野ですね(笑)。水面下で網を張っていきますからね(笑)。オープンまで大変だったことはありますか?
準備が大変でしたね。内装いじったり、お金借りたりとかもそうですけど、窓口が僕一つなので、全部自分でやらなくちゃいけなくて、外部とのやり取りが時間がなくて大変でした。引渡しが5月17日だったのでオープンをその日に決めました。内装が仕上がったのもその数日前だったと思います。シャンプー台も絶対ユメシャンにしたかったので、配管も全部変えました。スペースがない状態で、入らないんじゃないかと言われましたけど無理やり入れて(笑)。
▼オープンしていかがですか?
一言で言うと、『面白い』ですね。楽しみでもあります。
▼例えばどんなところが面白いのですか?
希望みたいな、未来的な希望ですかね。今大変ですけど(笑)。大変だけど未来につなげるためにどうにかしないといけないわけで。そういったことを考えるのが面白いです。まだ甘いと思うんですけど、やりがいがありますよね。
▼平松さんの話を伺っていると、いい意味でとても楽観的な印象がありますね。
何も考えてないんだと思います(笑)。なんとかなるかなと。周りに助けてもらってますね。
▼お店のコンセプトはどんな感じなんでしょうか?
癒しだったり楽しみだったり融合だったり。ユメシャンはもう見慣れてるからそこまで癒しはないかもしれませんが、落ち着いてくれたりとか、知っているスタッフがいるとか、安心して任せられるとか、ベタですけど(笑)。
▼お店を出してよかったなと思うことはありますか?
自分が信じてこっちのほうがいいかなと思うことがやれることです。今までだったら、「これ絶対いい!!」と思っても、オーナーに「それ違うでしょ」と言われたらそれまででした。ただ、それも考えなきゃいけないところもありますよね。自分の選択が本当に合っているのかという。
▼お客様からはどんな反応がありますか?
おめでとう。天井高いね。居心地いいね。シャンプー台落ち着くとか。そんな手前な話ですけど(笑)。お客様にとっては箱の大きさはあんまり関係ないと思いますが、独立ということでおめでとうと言ってくださることは、人と人のつながりという意味でも僕にはとても大事なことですね。
▼これからの展望はありますか?
スタッフもお客様も増えればいいですね、理想ですけど(笑)。お店の名前にもしているんですけど、alloyというのは、2種以上のものが合わさって、融合して新しいものが生まれるという意味なんです。ハサミと髪とか、お客様とスタッフとか、音楽とアートとか。文化といったら大げさですけど、いろんな人が混ざり合って、人が集まる場所にして情報を発信出来たらなと思います。
▼最後に、これから物件探しや独立される方にアドバイスするとしたら?
まずは窪田さんに聞いたらいいんじゃないですか(笑)?
正直物件ありきですから、思い描いていても自分で何かを作るわけではないから、表参道や代官山で徒歩3分なんていう物件はまずないし、本当にその時のタイミングでしかない。常に情報をくださいと言っておけばいいんじゃないでしょうか。あとはこの人がなんとかしてくれる!と思うくらいしかないですね(笑)。
平松さんはalloy(アロイ)というお店の名前は、“カタカナでアから始まって、あいうえお順でもアルファベット順でも一番最初”である『aから始まるもの』と、昔から決めていたといいます。美容師を辞めたいと思ったことが一度もないということからも、一度決めたことはやり遂げる強さがある方だと感じました。自分で信じたことを決めてやれる一方で、本当にその選択が正しいのかも考えなくてはいけないと、バランス感覚もしっかりとお持ちのようです。オープニングメンバーは皆イキイキと働いており、美容師としての誇りが垣間見えました。オープンして間もないこともあり、壁には装飾が少ないですが、ここにアート等を飾ったりしたいと、広く募集しているそうです。行くたびに新しいものが見つけられるかもしれません。
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町12-35 t+DAIKANYAMA 2F
TEL:03-6455-2469
HP:https://alloy-hair.com/
Instagram:https://www.instagram.com/alloy_hair/
【営業時間】
月-金曜日 11: 00~21: 00
土曜日 10: 00~20: 00
日曜・祝日10: 00~19: 00
定休日/火曜日(火曜日が祝日の場合は営業)
※最終受付時間:カット1時間前、パーマorカラーは2時間前
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