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店を出して人を集めるのではなく、人がいるから店を出す【Cocoon代表 VANさん】

2021.01.29

2020年6月24日に、中央区銀座に美容室『Cocoon 銀座』をオープンした代表のVANさんにお話しを伺いました。


▼はじめにVANさんが美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。

高校生の時、姉ちゃんから何の脈絡もなく「あんた美容師とかやったらいいじゃん」といういい加減なノリで言われたのが最初で、その時は何も思わず話は終わったんです。

僕の生まれは長崎なんだけど、とにかく長崎を出たくて東京に行きたかった。でも勉強も全然ダメだったから、親も裕福じゃなかったので東京になんて出せない。だけどとにかく長崎を出たかった。


▼長崎を出たかった(笑)

それで妥協して「じゃあ福岡に」となった。僕は建築やインテリアが好きだったから、長崎にある専門学校だったら長崎でいいじゃんとなっちゃうので、インテリア学校に行くという口実で福岡に出さしてもらった。だけど1年目の3学期が始まってすぐ、急に「つまんね」って辞めちゃったんです。それで働かなきゃなと思ってた時に、「そういえば姉貴、俺に美容師やれって言ってたな」となんとなく思い出して。

それで近所の美容室にバイトで入って、それから意外に今日まで続いたっていう(笑)。だから美容師になりたかったというヒストリーなんてないんですよ。


▼なんとなく入った美容業界を、これまでに止めたいと思ったことはないんですか?

不思議と今日まで辞めたいと思ったことはないね。僕は美容学校も行ってないし、元々、美容師になろうと思ってたわけでもないから、イメージも期待もなかった。だから働いてみたらイメージと違うとか『理想と現実』みたいなのはなかった。そもそも職人の世界だし、30年前の『時代』もあるから、厳しさとか長時間労働とか全部そういうもんじゃないのと。

今の人たちは僕からしたらサラブレッドですよ。美容師目指して美容学校出て、初めからおしゃれな人たち。知識があちこちにあるから、いざやってみたらキツイみたいなのがあるかもしれないね。


▼VANさんは雑誌に取り上げられたり『KAMI CHARISMA』にも載っている世間に名の知れた美容師になりました。お姉さんに「あの時私が言ったから」みたいなのは言われるんですか?

僕はアシスタントを8年やってたんです。覚えも悪かったしね。それで10年くらいしてちょっとずつメディアに出だすと、「あたしのおかげでしょ」みたいなのは言われましたよ。よくジャニーズで売れたら「あたしが送った」っていうレベルで、「お前、今までそんなこと一回も言ったことねぇだろ」みたいな(笑)。


▼どのタイミングで独立を考えたんですか?

田舎出たくて福岡の専門学校に行ったけどすぐ辞めて、美容学校行くお金もないから働くしかないって働いて。その時代って、料理人にしろ美容師にしろ、いずれは自分でやるんだっていうような雰囲気があった。別に店を持ちたいとか、店舗展開したいって思ってなかったし、それは今でもそう。

「夢はなんですか?」とか「10年後どうしてたいですか?」とか、いろんなインタビューで撮れ高を求められるんだけど(笑)、店を出して人を集めるのではなく、人がいるから店を出すという発想だよね。

だから銀座を出すにあたって新規募集はしてません。表参道でスタッフが溢れるから、その道筋を作って暖簾分けをしていって、大勝軒みたいになったらいいなと。そして何年か経ったら自分たちで経営していけばいいじゃんと。

銀座でカットの美味い美容室Cocoon

▼銀座店を出店するにあたり、エリアや規模など、どのような視点で物件を探されたのですか?


表参道の創業メンバーの泰斗が、僕が独立したのと同じ年齢になったんです。ウチでやっていくって言ってくれたんだけど、ダメだと(笑)。自分でやれるようになったほうがいいしね。

僕らの時代のように、いつかはお店というのが今の時代は全員にあるわけでもない。ウチにいたいと思うなら、コクーンを一緒にやっていこうよということになって、今回店長としてチャレンジすることになった。

最初は表参道で探してたけど、「銀座はダメですか?」って泰斗が言ってきたから、「え?銀座!?」みたいな(笑)。銀座で出せば新しいお客さんにコクーンを知ってもらえるからって言ってくれたから、それは尊重したほうがいいなと思って、全く視野になかったけど銀座も含めて探し始めました。銀座は土地勘も全くないし、1年位探したけど全然見つからなくて、たまたまクボタさんと出会って意外とサッと決まったよね。


▼表参道と銀座では客層もだいぶ違うんじゃないですか?

銀座で物件を探してて思ったのが、銀座って客層がないなってこと。銀座は、おしゃれデビューする人もビギナーもハイブランドの人たちも全部いる。知り合いの経営者からは、銀座はフリーがバンバン来るって聞いてたけど、「ホントにそうなの?」って思ってた。

表参道はある程度ジャンルが最初から決まっていて、知ってる人しか来ないし、ビギナーさんは来ない。だけど銀座って、何も知らない人から知ってる人まで全部来る。だから銀座はフリーが多いんじゃなくて裾野が広いということ。表参道にはないようなすごい安売りしている美容室からブランドサロンまであるしね。『とりあえず銀座』で探している人がいっぱいいるんだと後になって知ったよね。


▼物件探しで困ったことはありますか?

表参道だと競合が、クリニック、アパレル、美容室、エステ、歯医者なんかが多いけど、銀座はそれに加えて居酒屋、質屋、事務所とか職種のジャンルが広いなと思った。1つの物件で競合が10件入ってたり・・・「マジすか!」みたいな(笑)。

ビルも背が高いから、本当にいろいろな職種が入り混じってる。だからある意味銀座は何色でもないと思うよね。同種の競合というよりは、いろんな職種と競り合わなくちゃならなくてなかなか決まらなかった。


▼この物件に決めるポイントは何かありましたか?

最初は「うわっ・・・」と思ったんだよね(笑)。エレベーター出た瞬間の階段の古さだったり暗さとか。でも駅から近いっていうのがあった。この「でも」っていうのがいいんだよね。

並木通り沿いというメジャーな通りよりも、並木とみゆき(通り)の間というスポット間もよかった。ちょっとずれてて、『THE』じゃない(笑)。それがウチっぽいなって思った。

ここの物件ともう一つ候補があったけど、そっちは並木通り沿いでエレベーターもちゃんとあって、ビルとしてはきれいだけど・・・でも僕からしたらそのエレガントさがダサいって思っちゃう。『THE 銀座』感がウチじゃねぇなって(笑)。


▼でも第一印象は「うわっ・・・」って思われたんですよね?

不思議と5分くらい見ていると、あまりにも古すぎる手すりとか、この木の感じはエイジングでは出せないなとか、これを活かしたらレトロで行けるなとか。建物の古さで逆に雑なコンクリート感を出せるなとか。

これまでの経験もあるし、どれくらいリノベで変えられるかっていう想像は、なんとなくついた。見れば見るほど、「これはいけるぞっ!」って。


▼素材を活かすのはまさに美容師の仕事ですね。

天高もぶち抜いていいと言うから、計ったら2.8mあって。だったら天井何も張らなきゃいいじゃんとかいろんな想像が湧いてきて、これは結構な掘り出し物だと思った。賃料もKクボタさんが交渉してくれたしね。

それまで1年以上見てきて、7回くらい申し込んで全部ダメで。そのどれよりもぶっちぎりで古かったけど(笑)、でも一番「これだ!」と思った。定石でいったら選ばないだろうし、不動産屋さんもあんまり出して来ない物件じゃないかな(笑)。

表参道・原宿のカットがうまい美容室コクーン

▼オープンまでに大変だったことはありますか?

ちょうどコロナになったから。2月に契約をしたけど、まだその時は対岸の火事で、2月末から工事を始めてからだんだん素材が入ってこないとか電気がないとかトイレが入ってこないとか。


▼トイレが入ってこないとニュースで報道してましたけど、まさにその現場だったのですね。オープンの日もずれたのですか?


3/26にプレオープン、4/24にグランドオープンを予定していたけど、どんぴしゃで緊急事態宣言で街に誰も人がいなくなって「マジかよ・・」と(笑)。結果的に6/24にグランドオープン(6/1プレオープン)して、今なおフリーがいっぱい来るっていう恩恵は受けてないよね(笑)。


▼ところで他の不動産屋は利用しましたか?

めちゃめちゃ声かけてました。5・6社くらいかな。申し込んでも決まらなくて。競合が多かったり、同じビルに入っている美容室が反対してダメになったり。職種の裾野が広すぎてなかなか決まらなかったですね。


▼KUBOTAのサポート具合はどうでしたか?

不動産屋さんとして専門的にどうだったというのは僕にはわからない。だけどうまく言えないけど、ABCそれぞれお客さんがいたとして、全員に同じスタンスで接客するわけじゃないじゃないですか。そういうことをわからないで接客する人はハマる人だけ顧客になる。でもそれだと売れっ子にはならないよね。

「この人こうかな?」と考えて、THE銀座ではない物件を持ってくるという間感(まかん:Cocoon造語)がよかったんだと思いますね。そういうことを考えて仕事しているし、僕っていう塩梅をわかって適当に失礼だし(笑)。

こっちが変に「スーツの人と話さなきゃ」という構えを持つ必要がなくて疎通が取りやすかった。『THE』の物件ってどこからも提案来るけど、スポット感はこっちの気持ちを察してくれないと出てこない。「いいのあんじゃん!」みたいな感じがいいんですよ。


▼クボタとのやり取りで印象に残っていることはありますか?

ここって決めたら僕より先にオーナーさんにアクションかけて推してくれたり先手先手を打ってくれてましたよね。僕の『どうですか?』で動くのではなくて、「こうだけどどうですか?」と、先回りして提案してくれたから話が早く進みましたよね。


▼反対に何かダメ出しはありますか?

今日の朝みたいにたまに約束を忘れてるとか(笑)。契約とか肝心なレスポンスはきちっと返ってくるけど、どうでもいいことは意外と返ってこない(笑)。まぁどうでもいいやり取りをしていることがおかしいんだけどね(笑)。


▼これから独立や物件探しをされる方にアドバイスするとしたら?

もちろん家賃とか駅チカっていう物理的な条件は続けていくうえで現実的なことだから考えなきゃいけないと思うんです。でも条件以上に、最初に入った時の気がいい悪いみたいなのを僕はいつも大事にしてる。人通りが多かったりお客さんから目についたり条件はすげぇ揃ってるんだけど、なんかピンと来ねぇみたいな。

そこでずっと店をやっていくわけだから、条件じゃないところのフィーリングを感じないと長く続けられない気がします。そこに愛着が湧かないというか。条件は必要なんだけど、そこだけで物件を見ないほうがいいんじゃないかって思いますね。自分がピンとくるかどうか。


▼少しお店のことを教えてください。店名の由来は?

美容師って自分を変え続けていかなきゃって思うし、美容室ってイメージが変わる場所だから、今の自分の許容を越えて殻を破って新しくなっていく。それで変わるという言葉で辞書を引いたら、CHANGEもあったけど、さすがに美容室でCHANGEはね(笑)。それでCocoonを見つけたんです。

銀座でノンブローカットならコクーン

▼社員のみなさんに対する思いを教えてください

ウチにいるスタッフたちには、長く美容師をやれるようにしたいと思ってます。僕は入り口はちょっといい加減だったけど、やってみてよかったなって思うから、一生美容師として仕事ができる技術を継承したい。

僕は美容師としての才能はあまりないけど、いい師匠たちに出会えて、師匠運がよかったなとは思ってます。いい先輩や後輩、周りのいい美容師との巡り合いもよかった。それでこの仕事を長く続けられてると思います。

技術はそんなに才能がなくてもやってりゃできるようになるけど、それが今は技術や接客のイロハを覚えるだけじゃなくていろんなことをやらなきゃいけなすぎて、1日にインスタを何回アップしなきゃいけないとかそういう美容室もある。

カットって切った人と切られた人にしかわからないことがあるから映えないけど(笑)、カラーってビジュアルを作りやすいからバズりやすい。ブリーチバンバンして、自分が20代で相手も20代ならいいけど、お客さんが30代になったらそれはやらないから。

ちゃんとカットができてカラーできてパーマかけられて。お客さんにあなたじゃなきゃって言ってもらうことが美容師の本質じゃないですか。手に職ってそういうことだと思うんです。

SNSの時代だから新しい切り口もありなんだろうけど、フォロワー増やしたりバズらせることに躍起になって、いざサロン見たら全然お客さんがいないんじゃ虚しいよね。面貸しでインスタでお客さんを呼ぶとか、続きのない美容師が増え出してることは危惧してます。美容師の本質はちゃんと残していきたいなって、長くやる中で思い始めましたね。


▼人は怠け者だから短期的な結果を求めたがるのはなんとなくわかります(笑)

どんなレベルでも早くスタイリストにしてしまえば、売り上げが立つから、経営だけを考えたら、早くスタイリストにするほうがいいに決まってます。でもアシスタントの時期にしか吸収できない素直さってあると思うんです。だからそこは投資だと考えて経営も目をつぶるしかない。でも技術だけ身につけたらやめてしまうというのがあるから、まともに教育をしているほうが損をするという経営者もいます。だけどそれを言ってたら、人の結びつきはなくなるよね。

経営者と従業員が希薄な関係だと、すぐ辞めては入っての繰り返しになる。ちゃんと長く食える美容師にするためには、滑稽かもしれないけど、まずはきちっとした技術を身につけることは絶対大事なんじゃないかな。


▼石の上にも3年じゃないですけど、一生の技術を身につけるのはどうしたって時間がかかりますよね。

スタッフにはブームサロンとブランドサロンは違うよという話をよくします。ブームサロンは常に3年周期であるんですよ。3年前に有名サロンと言われてたのが、今何やってるの?って。有名なんてただの流行りだからそんなんじゃ食えない。でもブランドサロンって自分でブランドって言ってなれるもんじゃないし、周りが決めることだけど、少なからず老舗だよね。技術を継承して世代をまたがないとブランドにならない。

だからウチに美容師として入って来た以上は、まず『美容師』です。その先は分岐するから、好きにやればいい。でもフォロワー1万人作るのも、そのことを一生懸命考えているからある意味手に職と言えるかもしれない。でもそれと美容師とはまた違う話だけどね(笑)。


▼最後に、コロナの影響で何か感じたことはありますか?

本当は、ピンチはチャンスだとか敏腕経営者みたいに撮れ高の高いことを言えればいいんですけど、いいことはひとつもないよね(笑)。スタッフの士気も下がるし、全世界の人が息苦しくなっているのに、よかったことを無理やり探すのもどうかなと思うしね。みんな苦しんでるのに自社だけが上々って、そんないいことが長く続くわけない。どこかで歪みが出たりする。前年比を越えようなんて思わないで、上がらなくてもいいから下がらないことを意識するしかないかなと思ってます。上を向いたら足元が見えなくなるから、こんな時代に上なんか向かなくていい。下だけ向かないように前を向いてやっていこうとスタッフと話してます。


VANさんは、乾かすだけでまとまる『ノンブローカット』で有名なスタイリストですが、“美容師に憧れて”という王道の入門ではないところが、時代でありVANさんらしいなと思いました。お姉さんの言葉をヒントにして、今できることをコツコツと工夫して30年やってきたら、「なんかここ、いい景色じゃん!」という感じ。職人の泥臭さや仕事観というものは、スピードを求める現代にあっては確かに滑稽かもしれません。しかし、仕事の本質は、いつの時代も変わらないものであるはずです。創業からコロナが襲うまで、離職率ゼロという業界においては驚異的な定着率も、VANさんの考えや人柄を慕う人たちが集まっていることを教えてくれます。「コロナでよかったことは一つもない」と言い切ることができるのも、求められる言葉をきれいに言うのではなく、自分の中にある確固たる意思や想いをちゃんと伝えたいからではないでしょうか。『職人』という言葉に尽きる方でした。

cocoon銀座店の外観

Cocoon 銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目5-6三平ビル4F
TEL:03-6263-9460
HP:https://www.cocoon-van.com/GINZA/
Instagram:https://www.instagram.com/cocoon_hairsalon/
【営業時間】
月・水・木:11:00~20:00
金:11:00~21:00
土:10:00〜19:00
日・祝:10:00〜18:00
定休日/毎週火曜日、第1・第3月曜日