
定期借家契約の落とし穴!事前説明漏れが招くトラブルとは
賃貸管理を行うオーナーにとって、「空室リスクの低減」と同じくらい重要なのが、契約トラブルの未然防止です。特に近年、一定期間で契約が終了する「定期借家契約」の活用が広がっていますが、正しい手続きを怠ると、思わぬトラブルに巻き込まれる危険性があります。
この記事では、実際のトラブル事例をもとに、定期借家契約における「事前説明」の重要性と、賃貸管理上注意すべきポイントを徹底解説します。
定期借家契約は、契約期間満了とともに自動的に終了する賃貸契約です。通常の普通借家契約とは異なり、契約更新が原則ありません。これにより、オーナーは計画的な物件運用が可能となり、リスク管理がしやすくなるメリットがあります。
しかし、賃貸管理においてこの定期借家契約を有効に成立させるためには、借地借家法第38条に基づく「事前説明」と「書面の交付」が絶対条件です。
ポイントはこの2つです。
* 契約書とは別に、借主に対して事前に書面で説明を行うこと
* 貸主本人または貸主から正式に委任を受けた代理人が説明すること
これらが欠けると、契約は普通借家契約と見なされてしまいます。
・トラブルの概要
あるオーナーAさんは、借主Bさんと5年間の定期借家契約を締結しました。契約時、媒介業者Cが重要事項説明書に「更新がなく、期間満了で終了する」旨を記載し、説明を実施しました。
しかし、貸主自身が定期借家契約であることを別途事前に説明した証拠がないまま、契約が進行してしまいます。
5年後、Aさんが契約終了通知を出したところ、Bさんは「事前説明がなかったため普通借家契約だ」と主張し、明け渡しを拒否。裁判に発展しますが、結果はオーナー側の敗訴。賃貸管理における基本手続きの重要性が改めて浮き彫りとなりました。
判例(最高裁平成24年9月13日判決)でも示されている通り、事前説明は、単に情報提供するだけでなく、後々の紛争を未然に防止するために不可欠です。
具体的には…
* 契約更新がないことを明確に認識させるため
* 期間満了による終了を正当に主張できるようにするため
* 貸主側の義務として履行すべき内容であるため
借主が内容を理解していたかどうかにかかわらず、書面による正式な事前説明がなければ定期借家契約とは認められません。
誰が説明する必要があるのか?
* 貸主本人
* または、正式に代理権を授与された宅建士
媒介業者でも、貸主から正式な委任がない場合はNGです。
この点を賃貸管理の現場では、絶対に押さえておく必要があります。
実は、平成30年国土交通省通知によって、一定の条件を満たせば、重要事項説明書が事前説明書を兼ねることが可能になりました。
その条件とは
1. 賃貸人(オーナー)から代理権を授与された宅建士であること
2. 必要事項をきちんと記載した重要事項説明書を交付・説明すること
3. 借主から「説明を受けた」旨の署名・押印をもらうこと
このプロセスを踏んで初めて、貸主の事前説明義務を代行できるとされています。
つまり、賃貸管理において宅建士に依頼する場合は、必ず次の確認が必要です。
* 貸主から代理権を正式に授与しているか?
* 重要事項説明書に定期借家契約である旨が明記されているか?
* 借主から同意サインを得ているか?
これを怠ると、後から大きなトラブルになるリスクが高まります。
「定期借家契約が満了した後、再契約すれば大丈夫」と考えるオーナーも多いですが、ここにも落とし穴があります。
再契約時も、
* 新たに事前説明を行い
* 書面を交付し
* 契約書とは別個に手続きする
必要があります。再契約=新規契約と同じ扱いであり、賃貸管理上の手続きミスが命取りになります。
定期借家契約は、オーナーにとって非常に有効な賃貸管理手法ですが、正しい手続きを踏まなければ、普通借家契約に格下げされ、オーナーの思い通りに契約を終了できなくなります。
特に注意すべきポイントは、以下の通りです。
* 必ず貸主または正式に代理された宅建士による事前説明
* 契約書とは別に書面交付と説明を行う
* 重要事項説明書と兼ねる場合も、国交省通知の要件を満たすこと
* 再契約時も新たな事前説明が必須
このように、賃貸管理におけるリスクヘッジには、正確な知識と実務対応が不可欠です。
トラブルを未然に防ぐためにも、今一度、契約手続きの見直しをおすすめします。