〔オーナーのための空室対策実践ガイド⑧〕敷金・礼金を見直すだけで空室が埋まる!賃貸管理の新常識
賃貸物件を管理しているオーナーや管理会社にとって、空室対策は常に頭を悩ませる問題です。
近年、賃貸市場の競争が激化する中で、単なる家賃の値下げだけでは空室を埋めるのが難しくなっています。
そんな中、注目されているのが「敷金・礼金の見直し」です。
この記事では、賃貸管理における新しい空室対策の切り札として、敷金・礼金をどう見直すべきか、詳しく解説していきます。
1.敷金とは?
敷金とは、賃貸契約時に入居者がオーナーに預ける保証金のこと。
主に以下の目的で使用されます。
* 家賃滞納があった場合の補填
* 退去時の原状回復費用の充当
契約終了後、未払いがなければ基本的には返金されるものです。
2.礼金とは?
礼金は、オーナーに対して支払われる「謝礼金」であり、基本的に返金されない費用です。
かつては「貸してくれてありがとう」という意味合いがありましたが、現代ではその文化が薄れつつあります。
賃貸オーナーと賃借人で礼金の捉え方は大きく異なります。
オーナーにとっては収入の一部で利回りを上げる重要な収入源ですが、借り手から見ると無駄な出費に感じられます。
敷金は預かり金として理解されやすい一方、礼金は「初期費用が高くなる」「オーナーへのお礼としての意味がない」「不要な費用」として敬遠されがちです。
そのため、似た条件の物件があれば礼金が少ない方を選ぶ借り手が多く、礼金の設定は物件の競争力を下げる要因になりえます。
実際、礼金を下げるかゼロにすることで入居促進を図るケースも増えています。
かつては、「敷金2ヶ月・礼金2ヶ月」が当たり前という時代もありましたが、現在ではゼロゼロ物件(敷金礼金なし)も珍しくありません。
特に、
* 若年層ターゲットの単身者向け物件
* 築年数が経過している物件
* 競合物件が多いエリア
では、「敷金・礼金を抑える」ことが入居促進に大きな効果を発揮しています。
賃貸管理を行う際には、地域ごとの市場動向をしっかり把握し、柔軟に対応する必要があります。
1.初期費用が安くなり、入居促進に直結
入居希望者にとって、引越し時にかかる初期費用の負担は非常に大きな悩みです。
例えば、家賃15万円の物件の場合
敷金1ヶ月+礼金1ヶ月=30万円
これに仲介手数料や火災保険料を加えると、初期費用だけで50万円近くになることも。
敷金・礼金をゼロにすることで、入居ハードルを大幅に下げることができ、他物件との差別化に成功しやすくなります。
2.空室期間を短縮できる
初期費用が高いと、なかなか内見後の申込に至らないことも多いですが、
敷金・礼金を見直すだけで「この物件なら引っ越せる」と決断を後押しできるため、空室期間の短縮に繋がります。
長期空室による機会損失(家賃収入ゼロ)を防ぐという意味でも、効果は非常に大きいです。
3.値下げせずに差別化できる
単純な家賃値下げは収益に直結するため、できれば避けたいもの。
敷金・礼金を見直すことで、家賃を下げることなく競争力を高められるのは、オーナーにとって大きなメリットです。
1.敷金ゼロ=リスク管理が必要
敷金がない場合、退去時の原状回復費用がオーナー負担になるリスクがあります。
このため、賃貸借契約書で以下を明記しておきましょう。
* クリーニング費用は入居者負担
* 喫煙やペット飼育時の特約条項
特に、近年では「原状回復トラブル」も増えているため、契約内容の精緻化が不可欠です。
2.礼金ゼロでも家賃交渉される可能性
礼金をゼロにしても、入居希望者からさらに家賃交渉されることもあります。
あらかじめ「このラインまでは譲歩できる」というボーダーを設定しておき、柔軟に対応できるようにしましょう。
3.保証会社の活用を忘れずに
敷金ゼロ物件の場合、家賃滞納リスクをカバーするため、必ず家賃保証会社の利用を義務付けましょう。
これにより、未払いやトラブル時にもリスクを最小限に抑えることができます。
【事例】
築36年の1棟RCマンション。
駅徒歩7分。
畳の部屋があり、過去にオーナー様は清算で酷い目に遭ったことがあるため敷金を2ヶ月礼金1ヶ月として募集していた。しかし近隣の類似物件はどれも敷金1ヶ月で、10ヶ月経っても空室だった。
【施策】
・敷金は2ヶ月のまま、礼金を0にし、中途解約1年未満は償却2ヶ月、2年未満は償却1ヶ月とした。
10ヶ月決まっていないのであれば、このまま空室が続く恐れもあるため、礼金をゼロとして借主負担をトータル3ヶ月のところ2ヶ月とした。
【結果】
・3ヶ月の負担を懸念していた希望者複数名に再度アプローチするとすぐに反応があり、1週間で成約となった。
借主負担を見直すことで競争力が向上し、即成約に繋がった事例です。
条件を少し見直すだけで、反応がガラリと変わることもあります。
長期空室には「借りやすさ」の工夫が効果的です。
敷金・礼金の設定を見直すことは、単なる割引ではありません。
入居希望者のニーズを的確に捉え、物件の魅力を最大限に引き出す空室対策なのです。
* 敷金・礼金ゼロにして初期費用を下げる
* ただしリスク対策(保証会社・契約条項の明記)は万全に
* 必要に応じて付加価値(家電貸与・フリーレント等)も追加する
これらを組み合わせることで、賃貸管理における空室リスクを大幅に減らすことができます。
時代に合った柔軟な発想で、あなたの賃貸物件も「選ばれる物件」にしていきましょう!